社会保険料削減のテクニック
あなたの会社の社会保険料を年間100万円単位で削減できるとしたらどうしますか?簡単に実行できるものから少々難しいものまで、社会保険料削減のテクニックをご紹介しましょう。
まず、こちら
http://www.sia.go.jp/seido/iryo/ryogaku2009/ryogaku01.pdf
「平成20年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」をプリントアウトして下さい。本当に社会保険料を節約できるものなのか?どの程度削減できるものなのか?手元に置いて検証して行きましょう。
- 入社時の給与を見直す(難易度★)
- 試用期間を有期契約にする(難易度★★)
- 4~6月の残業を減らす(難易度★)
- 昇給月を見直す(難易度★★★)
- 残業代を固定給にする(難易度★★★)
- 退職日を末日の前日にする(難易度★)
- 給与を上げて賞与を減らす(難易度★★)
- 賞与の回数を減らす(難易度★★)
- 賞与をゼロにする(難易度★★)
- 常勤役員を非常勤役員にする(難易度★★)
- パート社員を活用する(難易度★★)
- 年金受給者の給与を見直す(難易度★★★★)
- 請負契約の導入(難易度★★★★★)
- 退職で消滅する年次有給休暇を買い上げる(難易度★★)
- 分社化して役員報酬を分散させる(難易度★★★)
- 個人の事業所得を増やして給与を減らす(難易度★★★)
入社時の給与を見直す(難易度★)
A社(社員200人)に途中入社した、社員のBさん(35歳)。給与を250,000円に設定したとします。さて、先ほどの保険料額表を見て下さい。その場合、社会保険料は20等級(250,000円以上270,000円未満)「標準報酬月額260,000円」に該当します。表を右に追って見て下さい。40歳未満のBさんは、介護保険第2号被保険者に該当しないので、「政府管掌保険保険料」、「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」の「折半額」、これがBさんの健康保険料負担額、同様に「厚生年金保険料」、「一般の被保険者」の「折半額」、これが厚生年金保険料負担額になります。
健康保険料10,660円+厚生年金保険料19,955円=30,615円 この金額が、会社とBさんの毎月の負担額となり、
年負担額は、30,615円×12=367,380円 …① となります。
さて、Bさんの給与を200円下げて、249,800円とした場合はどうなるでしょうか?保険料額表を見てみましょう。社会保険料は19等級(230,000円以上250,000円未満)「標準報酬月額240,000円」に該当します。
よって、健康保険料9,840円+厚生年金保険料18,420円=28,260円 この金額が、会社とBさんの毎月の負担額となり、
年負担額は、28,260円×12=339,120円 …② となります。
つまり、会社の社会保険料の負担額は、②-①=28,260円の削減。仮に、Bさんと同じ給与の新入社員が10人いたとしたなら、年282,600円もの節約になります。一方、Bさん本人も、年収が2,400円(200円×12)減る(税金や雇用保険料は除外します)ものの、社会保険料で28,260円の削減、年25,860円の削減になります。
【まとめ】
社会保険の標準報酬月額表には、一定の幅があります。給与設定をする場合、「社会保険料の負担は、表の右に設定したなら得」これが鉄則。社員にとっても、「給与を下げた方が、手取りが増える」という不思議な現象が起こったりします。
試用期間を有期契約にする(難易度★★)
「2ヵ月以内の期間を定めて使用される者」は社会保険に加入できません。そこで、正社員を採用する場合、試用期間として2ヵ月以内の有期雇用契約を結ぶようにします。そして、その間の勤務状況を見て「期間の定めのない雇用契約」(一般的な正社員のこと)を結ぶかどうかを判断します。正社員として雇いたくないと判断すれば、期間満了によって契約終了となり、本採用なら、社会保険加入となります。2ヵ月以内の有期雇用契約を結ぶことによって、社会保険料が削減できます。就業規則や労働契約書等を整備しましょう。
4~6月の残業を減らす(難易度★)
社会保険料は、毎年4月、5月、6月の3ヵ月の平均給与額から決定されます。7月に「算定基礎届」を社会保険事務所に提出し、その年の9月から社会保険料が変更されます。
さて、4~6月に残業が多ければ、標準報酬月額が上がる可能性が大と言えます。この期間は、極力残業を避けること。歩合給等を他の月に支給することにより、社会保険料を削減することが可能です。
昇給月を見直す(難易度★★★)
社会保険料は、毎年4月、5月、6月の3ヵ月の平均給与額から決定されます。これを「定時決定」と言います。7月に「算定基礎届」を社会保険事務所に提出し、その年の9月から社会保険料が変更されます。この仕組みを上手に利用して、社会保険料を削減するテクニックをご紹介しましょう。
さて、A社の昇給月は世間一般と同じく4月です。4月支給分から、Cさん(43歳)の給与が320,000円から340,000円に改定されたとします。
従前のCさんの給与は320,000円。よって、社会保険料は23等級(310,000円以上330,000円未満)「標準報酬月額320,000円」に該当します。
40歳以上のCさんは、介護保険第2号被保険者に該当するので、健康保険料14,928円+厚生年金保険料24,560円=39,488円 この金額が、会社とBさんの毎月の負担額となり、
年負担額は、39,488円×12=473,856円 …①
さて、Cさんの給与は340,000円となりました。よって、社会保険料は24等級(330,000円以上350,000円未満)「標準報酬月額340,000円」に該当します。
介護保険第2号被保険者に該当するので、健康保険料15,861円+厚生年金保険料26,095円=41,956円 この金額が、会社とBさんの毎月の負担額となり、
年負担額は、41,956円×12=503,472円 …②
このように、世間一般に4月に給与改定が行われた場合、②-①=29,616円の保険料アップです。仮に同様の社員が50人(A社社員の25%が該当)いたとしたなら、年1,480,800円のアップとなります…。さて、昇給月を7月にするとどうなるでしょうか?定時決定が行われないので等級に変動はありません。つまり、翌年の9月まで等級が動かないからです。(その年の9月から保険料率が上がるので、保険料自体は若干上がります)よって、この場合、1人につき29,616円の削減。年1,480,800円もの節約になります。
【まとめ】
昇給を7月に変えるだけで、昇給による社会保険料の負担増を1年先まで伸ばすことが可能です。ただしこの場合、社員の不利益となることも考えられ、また、就業規則等を変更しなければならないので、社員と十分に協議を重ねることが必要です。
残業代を固定給にする(難易度★★★)
社会保険料は、毎年4月、5月、6月の3ヵ月の平均給与額から決定されます。7月に「算定基礎届」を社会保険事務所に提出し、その年の9月から社会保険料が変更されます。さて、4~6月に残業が多ければ、標準報酬月額が上がる可能性が大と言えます。反対に、4~6月の給与を保険料額表の右に固定できたなら、社会保険料を大幅に削減することが可能になります。
Dさん(44歳)の例
4月支給額345,000円(基本給300,000円+残業代45,000円)
5月支給額354,000円(基本給300,000円+残業代54,000円)
6月支給額358,000円(基本給300,000円+残業代58,000円)
この場合、4~6月の平均給与≒352,333円 となります。
よって、定時決定により9月からの社会保険料は25等級(350,000円以上370,000円未満)「標準報酬月額360,000円」に該当し、Dさん介護保険第2号被保険者に該当するので、健康保険料16,794円+厚生年金保険料27,630円=44,424円 この金額が、会社とBさんの毎月の負担額となり、
年負担額は、44,424円×12=533,088円 …①
さて、Dさんの給与300,000円に加え、残業手当を固定で毎月49,000円出すこととしました。すると、社会保険料は24等級(330,000円以上350,000円未満)「標準報酬月額340,000円」に該当します。
Dさんは介護保険第2号被保険者に該当するので、健康保険料15,861円+厚生年金保険料26,095円=41,956円 この金額が、会社とDさんの毎月の負担額となり、
年負担額は、41,956円×12=503,472円 …②
②-①=29,616円の保険料削減です。仮に同様の社員が50人(A社社員の25%が該当)いたとしたなら、年1,480,800円の削減となります。ただし、この仕組みの導入には条件があります。固定給で支払う残業手当は、法定の割増賃金を上回らなければならず、もし下回るのであれば、その差額を支払う旨の労働者との合意が必要であり、その内容を就業規則や給与規定に規定しなければなりません。
【まとめ】
残業代を固定にすることで、社会保険料の負担増を抑えることが可能です。ただし、労使の合意に加え、就業規則や給与規定の整備が不可欠です。
退職日を末日の前日にする(難易度★)
社会保険料は、「資格取得月にはかかり、資格喪失月にはかからない」というのがルールです。さて、ここで注意したいことは、資格喪失月。資格喪失月とは「退職日の翌日(資格喪失日)の属する月」のこと。退職日=資格喪失日ではないことに注意が必要です。
先ほどのDさん(25等級)が退職する場合を考えましょう。
8月31日退職 → 9月1日資格喪失 → 9月資格喪失 → 8月社会保険料発生
8月30日退職 → 8月31日資格喪失 → 8月資格喪失 → 8月社会保険料発生せず
退職日を末日の前日にするだけで、44,424円の保険料削減です。同様の退職者が年に10人出たとしたら、年444,240円の削減です。退職日を末日の前日以前にすることで、1ヵ月分の社会保険料の負担増を抑えることが可能です。ただし、退職者にとっても負担が減る反面、厚生年金の被保険者期間が1ヵ月短くなる点には注意が必要です。
【まとめ】
社会保険料は、「資格取得月にはかかり、資格喪失月にはかからない」というのは、賞与についても同じです。例えば、A社が、退職予定者のEさんに、8月10日に賞与を支給した場合、8月31日退職であれば社会保険料が発生し、8月30日退職であれば社会保険料が発生しません。
給与を上げて賞与を減らす(難易度★★)
健康保険・厚生年金保険の保険料額表をよく見てみると、等級が上がれば上がるほど、報酬月額に幅があることが分かります。例えば26等級では、370,000円以上395,000円未満で、25,000円の幅があります。しかし、給与が370,000円であっても394,999円であっても負担する社会保険料の額は同じです。
例えば、Fさん(48歳)の給与を370,000円にした場合、
Fさんは介護保険第2号被保険者に該当するので、健康保険料17,727円+厚生年金保険料29,165円=46,892円 この金額が、会社とFさんの毎月の負担額となり、これは給与を394,999円とした場合も同様です。
ちょっと難しくなりますよ。Fさんの年収を500万円として、給与を報酬月額の左右に振り分け、残りを賞与で調整して考えてみましょう。
まず、給与を報酬月額の左に寄せた場合、
給 与 370,000円×12=4,440,000円(社会保険料562,704円)
賞 与 280,000円×2=560,000円(社会保険料69,104円)
年 収 5,000,000円(社会保険料計631,808円)
*賞与の社会保険料計算方法
280,000円×(0.0933÷2+0.1535÷2)=34,552円
34,552円×2=69,104円
この場合、年収から社会保険料総額を引くと4,368,192円 …①
次に、給与を報酬月額の右に寄せた場合、
給 与 394,999円×12=4,739,988円(社会保険料562,704円)
賞 与 130,006円×2=260,012円(社会保険料32,084円)
年 収 5,000,000円(社会保険料計594,788円)
*賞与の社会保険料計算方法
130,006円 →1,000円未満を切り捨てて130,000円
130,000円×(0.0933÷2+0.1535÷2)=16,042円
16,042円×2=32,084円
この場合、年収から社会保険料総額を引くと4,405,212円 …②
次に、年収を単純に12等分した場合、
給 与 416,667円×12=5,000,004円(社会保険料607,128円)
賞 与 0円
年 収 5,000,004円(社会保険料計607,128円)
この場合、年収から社会保険料総額を引くと4,392,876円 …③
①~③を検証すると、やはり右に寄せた場合①が最も社会保険料を削減できることが分かります。②-①=37,020円。年額37,020円の削減となります。
【まとめ】
平成15年4月から総報酬制が導入されました。平成15年3月までは、政府管掌健康保険は賞与額の0.8%、厚生年金保険は同1%の保険料負担でしたが、平成15年4月以降、賞与にかかる保険料は、個々の被保険者ごとに実際に支払われた賞与額から1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」として決定し、「標準賞与額」に上記の保険料率を掛けて算出します。(なお、標準賞与額には、標準報酬月額と同様に、健康保険では200万円、厚生年金保険では150万円と上限を設けています)この総報酬制の導入により、同じ年収でも賞与の高い人ほど年間の保険料負担が軽くなるという不公平が軽減され、賞与部分も年金額に反映されることになったものの、社会保険料が大きくアップしました。年収が決まっているのなら、給与を報酬月額の右に寄せ、賞与の額を減らすと社会保険料を軽減できることがお分かりいただけたと思います。
賞与の回数を減らす(難易度★★)
さて、賞与の回数を減らすことによって社会保険料を削減できることを検証してみましょう。A社の部長であるGさん(50歳)の場合、
賞与2回の場合
給 与 500,000円×12=6,000,000円(社会保険料740,400円)
夏賞与 1,000,000円(社会保険料123,400円)
冬賞与 2,000,000円(厚生年金115,125円+健康保険93,300円=208,425円)
年 収 9,000,000円(社会保険料1,072,225円)
*標準賞与額は、厚生年金は150万円が上限、健康保険は200万円が上限。
この場合、年収から社会保険料総額を引くと7,927,775円 …①
賞与1回の場合
給 与 500,000円×12=6,000,000円(社会保険料740,400円)
賞 与 3,000,000円(厚生年金115,125円+健康保険93,300円=208,425円)
年 収 9,000,000円(社会保険料948,825円)
*標準賞与額は、厚生年金は150万円が上限、健康保険は200万円が上限。
この場合、年収から社会保険料総額を引くと8,051,175円 …②
賞与なしの場合
給 与 750,000円×12=9,000,000円(社会保険料990,864円)
(厚生年金47,585円+健康保険34,988円=82,573円 82,573×12=990,876円)
夏賞与 0円
年 収 9,000,000円(社会保険料990,876円)
この場合、年収から社会保険料総額を引くと8,009,124円 …③
Gさんの場合、賞与2回を1回にすると、②-①=123,400円の削減ということになります。「標準賞与額は、厚生年金は150万円が上限、健康保険は200万円が上限」実は、ここがキーワードです。つまり、賞与額が150万円を超えると上限の規定が適用され、その分社会保険料が軽減されることになるわけです。役員・部長職等、年収の高い人の賞与支給を見直すだけで、大幅な社会保険料削減が可能になります。
【まとめ】
賞与にかかる保険料は、個々の被保険者ごとに実際に支払われた賞与額から1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」として決定し、「標準賞与額」に保険料率を掛けて算出するわけですが、それには、標準報酬月額と同様に、健康保険では200万円、厚生年金保険では150万円と上限を設けています。上限を超えた部分は大きく削減できるわけで、賞与の総額が150万円以上の人は、回数を1回とすることで社会保険料を大きく削減することが可能です。
賞与をゼロにする(難易度★★)
健康保険・厚生年金保険の保険料額表を見てみると、厚生年金保険料は34等級が上限、健康保険料は47等級が上限であることが分かります。つまり、給与が635,000円以上であれば、900,000円であっても1,300,000円以上でも、厚生年金保険料の負担額は変わりません。
A社の部長であるHさん(55歳)の場合、
賞与2回の場合
給 与 630,000円×12=7,560,000円(社会保険料918,096円)
夏賞与 540,000円(社会保険料66,636円)
冬賞与 540,000円(社会保険料66,636円)
年 収 8,640,000円(社会保険料1,051,368円)
この場合、年収から社会保険料総額を引くと7,588,632円 …①
賞与1回の場合
給 与 630,000円×12=7,560,000円(社会保険料918,096円)
夏賞与 1,080,000円(社会保険料133,272円)
年 収 8,640,000円(社会保険料1,051,368円)
この場合、年収から社会保険料総額を引くと7,588,632円 …②
賞与なしの場合
給 与 720,000円×12=8,640,000円(社会保険料968,484円)
賞 与 0円
年 収 8,640,000円(社会保険料968,484円)
この場合、年収から社会保険料総額を引くと7,671,516円 …③
Hさんの場合、賞与が2回でも1回でも、社会保険料総額に換わりありません。しかし、賞与をなしとした場合、③-①(②)=82,884円の削減ということになります。これは、負担の大きい厚生年金保険料の等級上限を利用した方法です。つまり、給与が605,000円以上の場合、厚生年金保険料は一定です。なので、そこに賞与を組み込んだとしても厚生年金保険料は変わらないわけです。
また、賞与を4回に分けて支給する方法もあります。賞与は年4回を超えると月給扱いとなり、賞与の支給を年4回以上行った場合には、賞与の合計の12分の1を、給与に上乗せして1年間の社会保険料の額が決まります。よって、結果的に賞与なしの場合と同じ保険料になります。
【まとめ】
年収が7,620,000円以上(35等級の下限635,000円×12)の場合、賞与をなしにするか年4回以上の支給にすることにより、社会保険料を大きく削減することが可能です。(先の年1回200万円を超える賞与を支給する方法も有効です)給与水準が高い社員ほど、この手法は有効になります。
常勤役員を非常勤役員にする(難易度★★)
顧問や相談役といった低額の報酬者であっても、常勤役員は社会保険の被保険者となります。しかし、常勤役員を「非常勤役員」に変更した場合、被保険者から外すことができます。
例えば、夫が代表取締役で妻が取締役の場合、妻を常勤役員から非常勤役員へ変更する方法を検討しましょう。出勤日数や労働時間を正社員の4分の3以下にすることです。1日8時間・週40時間労働の会社であれば、勤務時間は1日6時間未満、1週間の勤務日数4日未満が基準となります。
報酬の設定については、社会保険に規定はありません。つまり、高額な報酬の非常勤役員であっても、勤務時間や勤務日数が一定未満であれば被保険者に該当しなくなるため、保険料を支払わなくてもよいことになります。
妻の年収を130万円未満(60歳以上は180万円未満)に引き下げた場合は、夫の健康保険の被扶養者とすることができ、国民年金も第3号被保険者(20歳以上60歳未満の場合)となるので、社会保険料の削減効果はさらに大きなものになります。
また、60歳以降の年金受給対象者である場合は、報酬があったとしても、社会保険の被保険者ではないため、在職老齢年金が支給停止されず、年金を満額受給することができます。ただし、老齢厚生年金を受給する社会保険未加入者については、会計検査院の社会保険事務所調査の際に厳しいチェックを受けることになるので注意が必要です。
パート社員を活用する(難易度★★)
「1日または1週間の労働時間かつ1ヶ月の労働時間が正社員の概ね4分の3以上」であれば、社会保険の被保険者となります。つまり、1日または1週間の労働時間または1ヶ月の労働日数のどちらかが、正社員の4分の3未満であれば社会保険の被保険者とはなりません。よって、1日8時間・週40時間労働で1ヶ月の勤務日数が22日の会社であれば、勤務時間や勤務日数は1日6時間未満、1週間の勤務日数4日未満、または1ヵ月の勤務日数16日未満が基準となります。
具体例を挙げます。
Ⅰ 会社の所定労働日数 月21日、1日8時間勤務
パート労働者Aさんの場合 月15~16日 1日6時間勤務
⇒1ヶ月の勤務日数、1日の勤務時間それぞれ3/4以上となり社会保険適用。
Ⅱ 会社の所定労働日数 月23日、1日8時間勤務
パート労働者Bさんの場合 月23日 1日5時間勤務
⇒1ヶ月の勤務日数は3/4以上だが1日の勤務時間が3/4に満たないので該当せず。
さて、1日8時間勤務の正社員6人を、1日6時間勤務のパート社員8人に切り替えた場合、単純計算で双方とも48時間で変わりはありません。しかし、正社員6人分の社会保険料の負担を削減できます。
【まとめ】
「パート社員だから社会保険に入れない」というのは間違いで、あくまで適用要件を元に加入するか否かが決定します。正社員をパート社員に置き換えると、多額の社会保険料の負担を抑えることができます。
年金受給者の給与を見直す(難易度★★★★)
少々難しくなりますが、60歳以上の年金受給者がいる場合に可能な、「労働者の収入をさほど変えずに、しかも社会保険料負担が生じない」という方法です。まさに、知らなきゃ大損の方法です。60歳以降の賃金が、60歳到達時の賃金の75%未満に低下した場合、雇用保険から「高年齢雇用継続基本給付金」が支給されます。支給額は、最大で60歳以降に低下した賃金の15%相当額です。給与を60%に設定すると、支給額は最大になります。
給与を60%に減額して社会保険に加入し続ける方法と、先ほどの「1日または1週間の労働時間かつ1ヶ月の労働時間が正社員の概ね4分の3以上」により、労働時間を短くして社会保険非適用として、給与を60%に減額する方法を紹介します。なぜこのようにするかというと、通常60歳以上の方は老齢厚生年金の受給権があります。60歳から64歳までは、特別支給の老齢厚生年金が支給されるものの、その期間に社会保険の被保険者であったなら在職老齢年金の対象となり減額されるのです。そして、その間に減額された年金が支給されることはありません。そこで、年金が最大限に出るように給与設定をするものです。
A社に勤務する60歳を迎えるIさん(年金月額120,000円、妻は58歳)、会社の規定により60歳以降63歳までの雇用延長がなされました。引き続き社会保険に加入した場合と脱退した場合の毎月の手取り(税金や雇用保険料は除外します)を検証してみましょう。
60歳前
給 与 450,000円
賞 与 900,000円
年 収 6,300,000円
社会保険料が54,296円なので、450,000円-54,296円=395,704円 …①
60歳以降(社会保険加入)
給 与 260,000円(従前の60%)
年金受給 16,900円(老齢厚生年金の額/支給停止あり)
雇用保険 39,000円(高年齢雇用継続基本給付金)
合 計 315,900円
ここから社会保険料32,084円が引かれるので、283,816円 …②
* 総報酬月額260,000円+75,000円=335,000円
* (335,000円+120,000円-280,000円)×1/2=87,500円
* よって87,500円が不支給。
* 在職老齢年金の計算式詳細はこちらを参照。
* 低下率が60%の場合、標準報酬月額の6%が更に支給停止されるので、260,000円×0.06=15,600円が更に支給停止される。よって、老齢厚生年金は16,900円。
60歳以降(社会保険から脱退)
給 与 260,000円(従前の60%)
年金受給 120,000円(老齢厚生年金の額/支給停止なし)
雇用保険 39,000円(高年齢雇用継続基本給付金)
合 計 419,000円
任意継続健康保険料26,124円と妻の国民年金保険料14,410円を引き378,466円 …③
さて、継続して社会保険に加入した場合、Iさんの給与は①-②=111,888円の低下ですが、社会保険から脱退した場合は①-③=17,238円の低下です。会社負担の年間社会保険料32,084×12=385,008円は不要になり、Iさん本人も、収入もさほど変わらず労働時間は短くなりました。
【まとめ】
高年齢雇用継続基本給付金の受給と在職老齢年金の支給停止を考えた場合、社会保険から脱退する方向で労働条件を決定して再雇用することが一番有効です。再雇用(継続雇用)の制度を導入する場合、対象となる社員の基準を定めることができます。この基準は労使の合意(労使協定)によることが原則ですが、社員数300人以下の中小企業の場合、労使の合意が整わないときは、平成23年3月までの5年間は会社が就業規則により基準を定めることができるとする特例が認められています。
いずれにせよ、就業規則等の整備が不可欠です。
請負契約の導入(難易度★★★★★)
現在働いている社員との「労働契約」を終了して「請負契約」に変更する方法です。請負契約に変更できたなら、労働法の適用から除外されるために、労働時間の制約がなくなり割増賃金を支払う必要がありません。また、年次有給休暇や解雇といった問題も生じません。結果、労働保険・社会保険に加入させることができないために、保険料の負担も必要なくなります。しかし、問題は、それが本当に請負契約になるかどうかという点に尽きます。社員の業務のうち、外注や業務委託として明確に線引きできる部分があれば、その部分のみを請負契約とすることも可能でしょう。また、社内独立制を設けて一部請負契約を導入するなども効果的でしょう。まさにウルトラC級の方法ではありますが、労働法のみならず多角的な視点からの検討が必要です。
退職で消滅する年次有給休暇を買い上げる(難易度★★)
社員の在職時においては、年次有給休暇の買い上げは違法ですが、退職する者の年次有給休暇が、退職日に未取得のまま残っている場合は、その残りの日数を買い上げても必ずしも違法とはなりません。年次有給休暇は、本来労働すべき日に労働義務を免除するものですから、退職後にはその権利を行使する余地がなくなるからです。さて、社員が退職の際に残った年次有給休暇を使い切って辞めるといったケースも多いものです。その場合、出社しないのに社会保険料が1ヶ月分かかってしまうことになりますが、会社が退職労働者と話し合って年次有給休暇を買い取り、資格喪失日が月をまたがないようにすることで社会保険料を削減できます。
分社化して役員報酬を分散させる(難易度★★★)
A社が事業拡大のためにB社を設立し、分社化しました。この場合、A社の甲社長と乙専務をそれぞれ、
甲社長 …A社の代表取締役 B社の非常勤役員
乙専務 …B社の代表取締役 A社の非常勤役員
とすると、給与の合計は同じでも、非常勤役員は社会保険料が適用にならないため、社会保険料を大きく削減することができます。
個人の事業所得を増やして給与を減らす(難易度★★★)
毎月の社会保険料は、社会保険事務所に提出される「標準報酬月額」に基づいて決定されるものです。よって、個人の事業所得を増やして、給与を減らすことにより社会保険料を削減することが可能です。代表取締役が60歳以上の場合、会社の業務の一部を個人事業化して報酬を分散し、給与を下げて在職老齢年金を満額もらう方法もあります。代表取締役個人が会社に土地・建物を貸している場合も、賃貸料を上げて給与を下げるといった方法を検討すべきでしょう。